セミナーで「営業の仕組み化」を学んだ夜は、誰でも少し興奮しています。ノートには「売上は仕組みで作る」「顧客リストは資産」と赤線が引いてある。帰りの車で「よし、うちもやるぞ」と思う。——ここまでは、いい話です。
問題は、月曜の朝に起きます。
「で、何に作ればいいんだ?」
月曜の朝、ノートを開いて腕を組みます。
「顧客リストは資産」……そうだ。で、何にリストを作る? Excelか。項目は? 最終接触日は、誰がいつ更新するんだ?
「フォローの導線を作る」……その通りだ。で、誰が10日後に思い出す? 自分のスマホのリマインダーか。それは仕組みと言えるのか?
学んだことは正しい。何ひとつ疑っていない。それでも、理屈と仕組みの間には深い川が流れています。
多くの会社が3回、川を渡ろうとする
私たちがお会いしてきた経営者の多くは、すでに努力しています。
- Excelで自作した。 週末に顧客リストと案件表を作った。3週間後、最終更新日は3週間前のまま。更新するのは結局ぜんぶ、自分だったからです。
- ツールを契約した。 月3万円の顧客管理システム。画面に並ぶ横文字の項目が、セミナーで習った「あの図」とつながらない。3ヶ月後、開くのをやめました。
- ITの会社に相談した。「要件をまとめていただければ、お作りしますよ」。……要件。それがまとめられるくらいなら、苦労していない。
そして多くの方が、こう思ってしまいます。「分かったつもりに、なってただけかもしれない」と。
違います。データを見てください。営業管理ツール(SFA)を全機能使いこなせている企業は27.6%——これは専任のIT担当がいる大企業(従業員300名以上)の数字です(ハンモック社調査)。学んだのに仕組みにできないのは、全国で、同じ順番で起きている。意志でも理解力でもなく、構造の問題です。
正体は「翻訳者の不在」
セミナーや本は、設計の考え方を教えてくれます。これは本物です。営業管理が定着した企業の成功要因の第1位は、ツールの機能ではなく「受注までに必要な活動が明確になったから」(78.6%・同調査)。あなたが学んだことこそ、定着の最大の武器なのです。
一方、IT企業はシステムを作ってくれます。ただし「要件」を渡せば、です。
ここに川が流れています。セミナーの言葉(ファネル・リスト・導線)を、システムの言葉(画面・項目・自動処理)に翻訳する人が、どこにもいない。 講師は作れない。IT屋は営業設計を知らない。3週間で止まったExcelは、この川を自力で泳いだ結果です。
学んだ設計は、捨てなくていい
結論はシンプルです。学んだ設計は正しいまま、それを「動く仕組み」に翻訳すればいい。そして翻訳した仕組みの日々の運転は、人の根性ではなく、AIのような道具に任せればいい。
私たちは自分の会社を、今日もその仕組みで経営しています。毎朝7時、スマホに届く数行の報告。昨夜、誰も何も入力していません。セミナーで習う「フォローの導線」が、意志と関係なく毎日動く——学んだことが、仕組みになる、というのはそういうことです。
セミナーのノートを、引き出しから仕組みへ。それが私たちの仕事です。